エジプト再訪録 8ナイル川の上で朝を迎えた。エジプトといえども早朝はとっても寒かったので、昇ってきた太陽がとてもありがたかった。 やがて本格的に暖かくなったころ、船長は岸辺にフルーカを停めた。 「さあ、シャワーの時間だよ」 は?どーゆう事?と寝ぼけたおいらを横目に、ザウィちゃんは慣れたものである。 服のまま川に飛び込むと、顔や髪を洗い始めるではないか。 う~ん、ワイルド。 でも、ザウィちゃん、ブラジャー透け透けになってますけど・・・・。 おいらも負けじと川に入ると、持参のシャンプーで頭をワシワシと洗い始める。 洗い終わったら、頭ごと川に水没させて、すすぎはおしまい。 くは~!爽快! 服は当然びちょびちょだが、濡れたついでにひと泳ぎ。 全身でナイルを堪能している気分である。 う~ん、いい旅してるなぁ! しかし、残念ながら、おいらにはタイムリミットが迫っていた。 ドイツに帰らねばならぬ。 このままずっとカイロまで、一緒に下っていきたかった。 いっそ、そうしちゃおうかな?仕事なんて放り出して。 一瞬そんな考えが頭をよぎるも、おいらの休暇中に、おいらの仕事を代行してくれている同僚たちの顔を思い浮かべると、さすがにそれは無理であった。 ナイル川を進むうち、やがて小さな町が見えてきた。 「コモンボ」という町。 そこがおいらの終点であった。 「ありがとう!おかげで楽しかったよ!」とザウィちゃんに礼を言い、岸辺でお別れ。 「私も楽しかったよ!いい旅を!」とザウィちゃん。 「アナタも、気を付けて、いい旅を!」とおいら。 くそう!帰りたくない!帰りたくないよ~ん。 後ろ髪はひかれまくりであったが、しかたがない。 岸辺に繋いだフルーカにザウィちゃんを残し、おいらと船長は町の駅に向かった。 駅に着くと、船長が窓口に行き、カイロ行きのチケットを買ってきてくれた。 カイロまでは遠い。 寝台列車があるとガイドブックで読んでいたおいらは、船長に 「スリープできる、ベットみたいな席ね。わかる?」とお願いしておいた。 寝台、という単語は知らないんで、ジェスチャーも交えて説明する。 船長は「OK、OK!まかしとけ」と理解してくれたようだった。 やがて列車がホームに入ってきた。 船長はおいらを席まで案内してくれた。 「ここだよ」 おい・・・・・ちょっと待て。 ここって、普通の自由席じゃないの? つうか、これ、特急列車じゃないよね。 おい!船長! 案内された席は、ごくごく普通の二等席。 向かい合った4人掛けのシートの一席である。 「サンキュー、サンキュー、サヨナーラ、グットラック」 船長はおいらの言葉など耳に入らないかのように、おいらに抱きつき、別れの挨拶をすませると、手を振って去って行った。 おい!まて船長!おぃ! ![]() 無情にも列車は走り出してしまった。 ゴトン・・・ゴトン・・・・。 遅い・・・。こりゃ遅い。 しかもどうやら各駅停車。 やがてどんどん人が乗り込んできて、 通路は人で溢れ、荷台にも人が乗り出した。 席を立ったら最後、二度と座れないであろう。 くっそー、あの船長め!だましやがったな! (写真はイメージです) そこからカイロまでは、つらいつらい時間だった。 出発したのが夜の8時半である。 体は疲れているし、夜中になれば当然寝たいのだが、とても寝られる状態ではない。 シートはほぼ直角に近いし、となりは太めのエジプトマダムだし、ラジカセでエジプト音楽がんがん鳴らしてるやつはいるし、夜中だろうが車内の電気は消さないし、みな元気におしゃべりをやめないし・・・。 詳しく聞かなかったが、カイロまではどのくらいかかるのだろう・・・。 おいらはひたすら耐えるしかなかった。 結局、カイロまでは 15時間かかりました。 その間、一度もトイレに行かず、何も飲まず、食わず。 もしまたアスワンを訪問することができたら、あの船長、 往復ビンタだ! そこから空港へ行き、ドイツに戻る道のりは、ほとんど記憶に残ってません。 たぶん、半分死んでましたから。 これにてエジプト再訪録はおしまい。 最後はつらかったですが、いい旅でした。 ジャンル別一覧
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